アルコールチェック時のアルコール検知器使用義務化が開始されるまで残り2か月程となりました。報道発表がされた際にはまだ時間があると感じていましたが、いつの間にか直前まで差し掛かっており、多くの事業者が急ぎ準備を進めています。
今回は、アルコールチェック結果の管理方法に悩まれている方向けに、チェック結果をクラウド上で管理することの意義について解説します。
2021年6月に千葉県八街市で小学生5名が大型トラックにはねられて死傷した交通事故を受け、 警察庁より、一定台数以上の白ナンバー車を保有する事業者に向け「アルコールチェック」を義務化する道路交通法施行規則の改正案が発表されました。
2022年4月に改正道路交通法が施行により白ナンバー事業者でのアルコールチェックが義務化され、更に2023年12月からはアルコール検知器の使用義務化が開始されます。
改正道路交通法が施行された目的は、対象事業者が「アルコールチェックを実施すること」ではありません。アルコールチェックの実施はあくまでも手段であり、これが目的となってしまってはいけないのです。
本法改正の目的は「飲酒運転による交通事故を撲滅すること」です。
アルコールチェックさえしていれば万事OKではなく、アルコールチェックにより飲酒運転を未然に防ぐことが、本来の目的だと言えるでしょう。
そして飲酒運転を未然に防ぐためには、アルコールチェック結果を「適切」に管理する必要があります。
別記事では「アルコールチェックの義務を怠った」ことに対する企業への直接的な罰則がないことを説明しています。それではなぜ、企業として本法令に対応する必要があるのでしょうか。
企業が本法令に対応する目的は、大きく3つあります。
①法令順守(コンプライアンス)
②社会課題へ取り組む企業としての責務(CSR)
③社会的信用失墜などの事業リスクへの対策(BCP, 事業継続)
-事故を未然に防ぐ対策
-事故が起きてしまった際の防衛対策
コンプライアンスやCSR的観点は企業としての当然の責務かと思いますが、事業継続の観点も非常に重要になります。法改正があるからやらなければならないというネガティブな意識ではなく、会社や従業員を守るための保険として適切に実施するというポジティブな意識を持つことをお勧めします。
「アルコールチェック義務を怠った」ことに対する企業への直接的な罰則はないとお伝えしましたが、飲酒運転に関連する罰則やリスクは当然ながらあります。
〈ドライバーの行政処分〉
酒気帯び運転や酒酔い運転を行ったドライバーに対しては、その違反点数に応じて免許停止や免許取り消しなどの行政処分、及び刑罰(懲役又は罰金)が科せられます。
さらに、飲酒運転が業務中に行われたものであった場合には、そのドライバーが所属する法人に対して以下のような罰則や賠償責任が科せられる可能性があります。
〈安全運転管理に関連する罰則〉
以下のような罰則があります。
「安全運転管理者等の選任義務違反」:50万円以下の罰金
「安全運転管理者の解任命令違反」:50万円以下の罰金
「是正措置命令違反」:50万円以下の罰金
「安全運転管理者等届出義務違反」:5万円以下の罰金
安全運転管理者制度に関する概要および違反時のリスクについては、以下の解説資料をご参考としてください。
▶「初めての安全運転管理者 ~これ一冊で分かる法改正対応への備え」
〈使用者責任(民法 第715条1項)〉
会社(使用者)が雇用している従業員が加害者として業務上の過程における不法行為により第三者に損害を与えた場合、被害者である第三者に対して会社や当該従業員の事業監督者も賠償しなければならない可能性があります。
〈運行供用者責任(自動車損害賠償保障法 第3条)〉
運行供用者は、その運行によって他人の生命・身体に損害を与えたとき、損害賠償責任を負う可能性があります。従業員が運転している最中に交通事故を起こした場合、車を所有して従業員に使用させている会社は「運行供用者」に該当します。
これらのように、飲酒運転による事故があった際、企業に過失がなかったとしても上記のように損害賠償責任が発生する可能性があるため、日ごろから従業員へ注意・監督を行ったり、有効な防止措置を取る必要があります。
アルコールチェック結果の管理媒体については法令で定められておらず、記録が必要とされる項目が網羅されていれば、その管理媒体は紙でもExcelでも問題ありません。
しかし紙やExcelなどのいわゆるアナログ的な管理では、「適切」な管理をすることの難しさも出てきます。
例えば…
・アルコールチェック結果の改ざんやなりすまし
・ヒューマンエラーによる管理の抜け漏れ
・アルコール検出時の対応遅れ
・アルコールチェック記録の紛失
・記録集計の負荷が高いことによる形骸化
適切な管理が出来ていないために飲酒運転を見逃してしまい、結果として重大事項へ繋がってしまう可能性もあります。たとえアルコールチェックを行っていても、それで本当に「管理できている」と言えるでしょうか?
クラウドサービスを活用した管理は、このような課題に対する有効な解決方法の一つだと言えます。
アルコールチェックのアナログ管理におけるこれらの課題は、クラウドサービスを適切に活用することにより解決が可能です。
クラウドサービスを活用した課題の解決方法を、以下で簡単に解説します。
〈課題〉アルコールチェック結果の改ざんやなりすまし
〈解決策〉アルコール測定時には、対象者の顔が自動的に撮影されるため、なりすまし測定等の不正を防ぐことが出来ます。
さらに測定結果はクラウド上へ自動登録されるため、ドライバー自身による測定結果の改ざんも不可能です。
〈課題〉ヒューマンエラーによる管理の抜け漏れ
〈解決策〉安全運転管理者は、運転者のアルコールチェック結果に対する確認状況を俯瞰的に確認できるようになっており、確認漏れが発生しづらい仕組みとなっています。
〈課題〉アルコール検出時の対応(乗務停止の判断など)に遅れが発生する恐れ
〈解決策〉呼気中のアルコールが検出された場合、安全運転管理者へは即座にメール等によりアラート通知されるため、その後の乗務停止判断をすぐに行うことが可能です。アラート通知先は直轄の安全管理者の他、任意で本社管理部門などを設定することも出来るため、会社全体での迅速かつ適切な対応が可能になります。
〈課題〉アルコールチェック記録の紛失
〈解決策〉アルコールチェック記録はクラウド上にデジタルデータとして自動登録されるため、紙台帳やExcelファイル等を保存管理する必要がなく、記録を紛失するリスクを回避出来ます。
〈課題〉記録集計の負荷が高いことによる形骸化
〈解決策〉記録データは部門や拠点別、更に全社統合でも自動的に集計さ、いつでも確認出来ます。このため管理部門と現場との間の定期的な報告や、その準備のための集計作業負荷を削減出来ます。アルコールチェックに伴う様々な負荷を抑え効率化することによって形骸化を防ぎ、質の高いアルコールチェック管理を継続することが可能となります。
…以上が、クラウドサービスの利用による課題解決策の一例です。
もちろん各クラウドサービスごとに機能が異なるため、解決できる範囲や方法はそれぞれで異なります。検討を進める際には、自社が解決したい課題を整理しつつ、各クラウドサービスが持つ機能を照らし合わせ、最適なサービスを選ぶようにしましょう。
インフォセンスでは、アルコールチェック結果を「適切」に管理するクラウドサービスである『デジタル点呼マネージャー・スマート』を提供しています。
アルコール検知器と自動連携し、測定時のなりすましやデータ改ざんが出来ない仕様になっているため、アルコールチェック結果の信頼性を上げることに役立ちます。
また、結果の自動集計や過去データの詳細検索、記録台帳自動作成等、安全運転管理者の負荷を下げる機能も充実しているため、日々のアルコールチェックの品質向上と効率アップに有効です。
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