警察庁は2023年8月8日、白ナンバー車両を業務において使用する事業者に対し、アルコール検知器によるドライバーの飲酒検査を、同年12月1日から義務化することを正式決定しました。
参考:「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案」に対する意見の募集結果について(e-GOV パブリック・コメント)
今回は、今だから改めて知っておきたい、アルコールチェックに関する「押さえておきたいポイント」についてまとめてみたいと思います。
アルコールチェック義務化の開始と一部延期
2021年6月に千葉県八街市で小学生5名が大型トラックにはねられて死傷した交通事故を受け、 警察庁より、一定台数以上の白ナンバー車を保有する事業者に向け「アルコールチェック」を義務化する道路交通法施行規則の改正案が発表されました。
2022年4月より、運転前後のアルコールチェック(目視などでの確認)と1年間の記録保存義務化が開始し、同10月にはアルコール検知器を使用したアルコールチェックが義務付けられる予定となっていましたが、アルコール検知器の供給が間に合わないなどの事情により、アルコール検知器使用義務化については延期の報道発表がなされていました。
なお、これまでの詳細な経緯については別記事でも解説しております。ご興味のある方は合わせてご覧ください。
参考記事:【法改正】アルコールチェック時の検知器使用義務化が2023年12月1日施行予定!
アルコール検知器使用義務化の改正法、2023年12月1日施行決定(New)
警察庁では、2023年6月9日から7月8日までの間、「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案」に対する意見(パブリックコメント)の募集を行っており、そこで集まった243件の意見や、アルコール検知器の製造事業者等から成る業界団体の意見を踏まえた結果、白ナンバー事業者に対し、アルコール検知器によるドライバーの飲酒検査を、同年12月1日から義務化することを正式決定しました。
飲酒運転の定義を再確認
ここで飲酒検査について、法律や制度に基づく定義を確認しておきましょう。
一般的に知られている呼気中のアルコール濃度「0.15mg/l」や「0.25mg/l」という数値は、運転免許の違反点数制度に基づいています。
まず酒気帯び運転と認定される最低ラインである「0.15mg/l」という数値ですが、これは体重70kgの人が缶ビール1本(350ml)を摂取することで達する値だと言われています。
このことから、大多数のアルコール検知器ではこの「0.15mg/l」という数値以上が酒気帯びとして検知される仕様になっています。次の「0.25mg/l」という数値は、運転免許の点数制度上、この0.25mg/lを境界として違反点数が区分されています。
出展:交通違反の点数一覧表(警視庁)
以上から、呼気中のアルコール濃度「0.15mg/l」や「0.25mg/l」という数値は、運転免許証の違反点数が広く認知されたものだと分かります。
ここで理解しておきたいのは「飲酒後に運転しても、0.15mg/l未満であれば大丈夫」「0.15mg/l未満には罰則がないから安心」とは言えないということです。
0.15mg/l未満は罰則が設けられていなくとも、「飲酒して運転」することは道路交通法に違反する行為です。また飲酒により知覚や判断力が抑制され、交通事故を引き起こす原因ともなります。言うまでもなく大変危険な行為であり、絶対に避けるべきでしょう。
アルコールチェックで必要となる記録項目
アルコールチェックはただチェックを行えばいいという訳ではありません。法令上、1年間の記録保存義務があります。記録が必要となる項目について正しく理解し、しっかりと管理することが出来ていないと、アルコールチェック管理を出来ているとは言えないのです。
ここで、改めて記録が必要となる項目について正しく理解をしておきましょう!
【必要となる記録項目】
1. 確認者氏名
2. 運転者氏名
3. 運転者の業務に係る自動車の自動車登録番号または識別できる記号、番号等
4. 確認日時
5. 確認方法
(ア)アルコール検知器の使用の有無(※)
(イ)対面でない場合は、確認の具体的方法
6. 酒気帯びの有無
7. 指示事項
8. その他必要な事項
※アルコール検知器の使用は2023年12月1日より義務化されます。
出典:道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令等の施行に伴う安全運転管理者業務の拡充について(通達)
アルコールチェックを怠った場合の罰則
「アルコールチェックの義務を怠った」ことに対する、安全運転管理者や企業への罰則は現時点では規定されていません。しかし、ドライバーに対しては当然、行政処分や刑罰が科せられます。飲酒運転の事実をメディアなどで報道されることで、企業の信頼は失墜することは免れないため、例え直接的な処分がないからとは言え、アルコールチェックを怠ることはあってはならないという事です。
2023年4月の道路交通法の改正により、「安全運転管理者の選任義務違反」に対する罰則が、5万円以下の罰金であったものが、50万円以下の罰金に引き上げられているという点については認識するようにしておきましょう。
アルコール検知器の選び方
事業者が法令対応(安全運転管理者による飲酒有無の検査や、運行管理者による点呼)で使用する場合、センサータイプと、製造元は重要な判断要素になります。その他にも、サイズや電源方式、測定結果データの確認方法なども考慮しつつ、利用シーンに合ったものを選ぶべきでしょう。アルコール検知器を選ぶにあたって、検討すべきいくつかのポイントがあります。
・センサータイプ(半導体式、電気化学式(燃料電池式))
・製造元(国内メーカー、海外メーカー、協議会加盟)
・サイズ、形(携帯型、据置型)
・電源方式(乾電池型、専用充電池型、常時給電型)
・データ確認方法(画面表示のみ、内部メモリ型、外部連携型)
上記ポイントがあるという事を理解した上で、自社で重視する要件(コスト、信頼性、運用など)をしっかりと見定めることが失敗しない検討の第一歩となるでしょう。
手早く検討を進めたい場合には、アルコール検知器協議会の認定を受けている認定機器から、要件にあう検知器を探し出してみるというのも良い方法かもしれません。
なお、上記各ポイントについて別記事でもより詳細に解説しております。アルコール検知器のご検討を進める際には合わせてご覧ください。
参考記事:
アルコールチェッカーの選び方(前編)
アルコールチェッカーの選び方(後編)
アルコールチェック記録は、必須となる記録項目をしっかりと管理できてさえいれば、その記録方法については手段を問われていません。そのため紙やExcelでの管理でも何ら問題がないのです。紙やExcelで管理をしている分にはコストが発生するものではないので、アルコールチェック管理で必要となるコストはアルコール検知器に掛かるコストと人件費のみと考えられます。
しかし、紙やExcelなどで管理することの負荷の高さを感じていたり、管理項目の抜け漏れによる対応不備の懸念を払しょくできない場合には、クラウドサービスを活用した管理を検討するのも一つの方法です。
とは言え、アルコールチェック結果を管理するクラウドサービスも数多く存在するため、どのサービスを選ぶべきかがなかなか難しい部分だと思います。アルコール検知器の検討の際と同様に、自社が重視する要件(コスト、現場部門の使い勝手、セキュリティなど)をしっかりと見定めた上で、検討を進めることが求められます。
アルコールチェック結果を管理するクラウドサービスを検討する際の選定ポイントをおまとめした資料がありますので、検討に悩まれた際には是非ご活用下さい!
参考資料:アルコールチェックシステムの選定ポイント
インフォセンスでは、アルコールチェック結果を効率的に管理する『デジタル点呼マネージャー・スマート』を提供しています。
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